WYTHE HOTEL

ウィリアムズバーグの顔、ワイスホテルには、
この地域独特の歴史が隠されていました。


イーストリバーにほど近いウィリアムズバーグの北に位置するワイスホテル。マンハッタンの絶景が見られると人気のルーフトップバーも擁する。 © Wythe hotel

おしゃれなデザイナーズホテルとして話題を集めるワイスホテル

最近、ガイドブックでも特集が組まれるほどに注目度が高まりつつあるブルックリン。その中でも初期の頃から人気のウィリアムズバーグ地区の発展は、マンハッタンの家賃高騰を逃れて、ソーホーからチェルシーへと移ったアーティストたちが、より手頃な値段で制作活動のための広いスペースを借りられる場所を求めて、かつては倉庫街だったこの地域に移り住んだことで作られてきました。天井が高い倉庫の造りが、自由な創作活動ができるとして、アーティストたちにとって最適だったと言われています。

イーストリバー沿いのおしゃれな地区と言っても、まだまだ倉庫や工場も多く残り、発展途上のウィリアムズバーグですが、その北部に2012年に誕生した一軒のホテルが、大きな注目を浴びています。


この地域の歴史を刻んできた建物を改装して、ワイスホテルは生まれました。© Wythe hotel

新旧が混在したウィリアムズバーグ地区の景観に見事に調和したワイスホテル(Wythe hotel)は、マンハッタンのスカイラインが見渡せるルーフトップバー・アイデス(The Ides)や、ウィリアムズバーグの食文化発展の礎を築いたと言われるアンドリュー・ターロウ(Andrew Tarlow)氏が手がける一階のレストラン・レイナード(Reynard)におしゃれな人達が集まることで知られていますが、このホテルの歴史を紐解くと、さらに面白い事実が浮かび上がってきます。


マンハッタンのミシュランの一つ星店で働いていたシェフ、クリスティーナ・レッキ(Christina Lecki)さんを2017年夏に迎えて、料理にも力を入れているホテル内のレストラン、レイナード。朝から晩までオープンしていて、アメリカ料理を楽しむ人たちで賑わう店内。© Wythe hotel


夏になると多くのニューヨーカーが、このマンハッタンのスカイラインを目当てに、ルーフトップバー、アイデスへと集まります。© Wythe hotel

建築物としても注目すべきワイスホテルの歴史とは

1880年代からこの一帯は製糖工場として栄え、ここで木樽に入れられた砂糖が全米中へと出荷されていました。その木樽を作る工場として1901年にドイツからの移民が建てた建物が、裁縫工場を経て生まれ変わったのがワイスホテルです。このホテルはオープン当初、工場だった建物を改装してできた全米に12しかないホテルの一つとして話題を呼びましたが、元々の建物の煉瓦の外観を残し、工場時代に使われていた木の床を天井として生かすなど、工場の面影が残るおしゃれなデザイナーズホテルとして、注目されています。


工場時代の煉瓦の壁とその当時の床を使った木の天井が見ごたえあるホテルの受付。© Wythe hotel

ニューヨークを中心に数々の物件を手がけてきた建築家のモリス・アジミ氏(Morris Adjmi)は、産業時代の時を刻んできたこの建物の歴史を最大限生かすために、材木やグラス、梁はできるだけ再利用し、何層にも及んだペイントを根気よく剥がし、木樽製造工場の当時の面影が感じられる部屋を作り上げました。また、ホテルで使われている家具の多くは、木樽の製造過程で使われなかった木を地元の大工さんが利用して独自に作りました。


発展を遂げるウィリアムズバーグとマンハッタンの高層ビルが同時に望める客室。工場だった建物の形を上手く生かしている点にも注目が集まっています。© Wythe hotel


隣のビルのウォールペイントが見える客室も。© Wythe hotel

ウィリアムズバーグの人の流れをさらに北へと押し上げ、その北に位置するグリーンポイントの発展へとつながるきっかけともなったと言われているワイスホテル。おしゃれなホテルとしての側面だけでなく、この一体で盛んだった製糖ビジネスを支えていた木樽製造の工場時代の歴史の息吹も感じながら、ウィリアムズバーグ散策の際にぜひ訪れてみたい場所です。


Wythe Hotel

80 Wythe Avenue Brooklyn, NY 11249
Tel: 718-460-8000
レストラン:7am – 12am
バー:月から木4pm~1:30am、金2pm~1:30am、土・日12pm~1:30am
https://wythehotel.com/

Contributor
須能玲奈  Rena Suno

東京での監査法人勤務を経て、2009年からニューヨーク在住。幼少時から好きだった執筆活動を渡米後、趣味として始め、ニューヨークで最大規模の日本語無料情報紙「週間NY生活」で2009年から1年半に渡り、インターンシップを行う。また、日本文化発信の拠点となっているNPO、J-Collaboの設立時から、日本の芸術、文化活動に貢献している方々へのインタビューと英語での記事の執筆を行っている。(https://www.j-collabo.org/blog)。

Comment (1)
  1. こんにちは、これはコメントです。
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